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「フォーカシングとスピリチュアリティ」

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(第15回の国際会議(2003年5月)においてフォーカシングとスピリチュアリティの調査委員会を代表してエルフィー・ヒンターコプフによる) 

 

 スピリチュアリティは個人的に意味のあるプロセスです。このプロセスにおいて、人は自分自身、他の人々、そして、人生などのより広い諸面を受け入れるようになります。スピリチュアリティは新しい明確な意味をもたらす漠然とした全体的な感じ(フェルト・センス)を含みます。スピリチュアルな体験はこれまで参照していた枠組みを越えさせ、より広く考えるように自分の文化を超越した成長の過程へと人を導きます。

 例えば、異なる文化的背景の人物を受け入れることによって、より大きくなるという漠然とした感じを体験しはじめる人がいるとします。そのプロセスにおいて、その人はより広いフェルト・センスを感じ、また、より大きいものと結ばれると感じるようになります。加えて、自然の光景の美しさや宗教のシンボルが以前よりも大きいものと一致すると感じるようにさせる時、その人は、目に見え、そして、理性が分る以上の心の解放をしばしば感じるようになります。このスピリチュアリティの描写はすべての宗教的な、また、スピリチュアルな実行をする人々(自分たちを宗教的であるとかスピリチュアルであるとか考えない人々もさえ)を含みます。

 フォーカシング・プロセスは自分たちをより自己一致的に、また、真実的に体験し、そして、表現するために役立ちます。フェルト・センスとそれが表わす象徴とを注意深く響き合わせることによって、内面的な自己はその人の表現とより正確に一致します。フェルト・センスがフェルト・シフトへと(言換えると、安心感や開放感、また、より強い生命のエネルギーへと)進むかどうかを注意深く確かめることによって、フォーカサーは正確な自画像を持っている(それが合致し、また、自己一致する)かどうかを知ります。このプロセスはより真実で、また、自己一致するスピリチュアリティへと導きます。

 フォーカシング・プロセスは宗教的な、また、スピリチュアルな問題を解決し、そして、現存するスピリチュアルな体験を深め、そして、新たな活気のあるスピリチュアリティへの関心を生じさせるためにも役立ち得ます。人々はスピリチュアルな自分における発見や成長への中心である微妙だが具体的なからだの感じを確かめることをフォーカシングを通して学びます。

 以下の実習はフォーカシングを通してスピリチュアリティを体験するための一つの方法を提出します。

 

スピリチュアルな重要性を持つ言葉やフレーズ、あるいは、シンボルについてフォーカシングするための説明。  

  この実習では、あなたはスピリチュアルな重要性を持つ言葉やフレーズ、あるいは、シンボルを一つ選び、そして、それについてフォーカスします。この実習は選ばれた言葉やフレーズ、あるいは、シンボルについての体験を深めるために役立ったという報告がなされています。中には、それまでは機械的に唱えていた言葉が体験的なレベルで意味のあるものになったという報告がありました。例えば、ある人(回復しているアルコール中毒者)は、「あるがままに、神の御心のままに」という言葉が彼にとっては自動的になっていましたが、これらの言葉についてフォーカシングをした後においては、それらを自分のからだで体験できたという理由によって、それらの言葉は彼に再び意味のあるようになったと述べました。

 この実習はどの様な聖的なシンボルについても行えます(例、道教の陰陽、ユダヤ教の生命の樹、キリスト教の十字架、イスラム教の三日月、あるいは、自然の光景など)。これらのシンボルの意味は合理的、論理的な視点からはよく理解されません。しかし、フォーカシング(私たちが意識的に理解できる以上に私たちを開く創造的なプロセスを起こす)を通してそれらは理解されるようになります。これを神秘と呼ぶ人もいます。しばしば、これらのシンボル(特に子供時代に用いられたシンボル)は何度も探索されるであろう意味を豊かに含みます。

 この実習は聖なる文章を読むことによっても行なわれます。もしあなたが聖なる文章についてフォーカスし、その文章を読み、そして、ゆっくりと自分自身にその言葉を唱えることに決めれば、あなたはその文章を二度繰り返して読みたくなるかも知れません。その文章を読みながら、どの言葉が最も強く感じるかに注意を向けます。これらの言葉が実習のためにあなたの選ばれた言葉とされることとなります。その後、実習を継続します。

 

言葉やフレーズ、あるいは、シンボルについてフォーカシングする際の教示

 

  あなたにとってスピリチュアルな意味で重要性を持つ言葉やフレーズ、あるいは、シンボルを選んでください。その言葉やフレーズ、あるいは、シンボルが自分の中に感情を引き出すかどうかに注意を向けてください。もしその言葉やフレーズがどの様な感情も引き起こさない場合は、別の言葉やフレーズを選びなおしてもいいでしょう。()

 楽にしてリラックスしてください。自分の呼吸に注意を向けてください。(間)

  自分の息がどの様に体に出入りしているかに注意を向けてください。()

 ゆっくりと自分のからだを感じるようにしてください。(間)

  自分の両手とそれらが何を触れているかに注意を向けながら、腕や手を感じてください。() 

  自分の脚や足、そして、それらが何を触れてるかに注意を向けてください。()

 注意をからだの内側、のどや胸やお腹に向けましょう。()

  では、自分の選んだ言葉やフレーズ、あるいは、シンボルを思い出してください。その言葉やフレーズ、あるいは、シンボルが自分の中に起こす気持ち・感じに注意を向けてください。その言葉やフレーズ、あるいは、シンボルを思い出しながら、自分の気持ちや感じを表現するぴったりの言葉を見つけてください。

  ゆっくりと自分の気持ちや感じをそのまま感じていましょう。 そこに「もっと」という感じがあるかどうかに注意を向けてください。やさしく自分の気持ちと、友好的に好奇心にあふれるという態度によって、しばらくつきあい続けてください。 

  自分の気持ちに注意を向けながら、次のような問いかけをしてもいいかも知れません。「この言葉やフレーズ、あるいは、シンボルのどんなことが私にこの様に感じさせるのだろうか?」とか「私にとって最適な、または、最も意味のあるのは、この言葉やフレーズ、あるいは、シンボルのどういうところであろうか?」と。質問を自分の気持ちに問いかけて、そして、あなたに起こる答えを待ってください。あなたが答えを得たら、その答えをゆっくりと繰り返して、気持ちの方でもその答えに納得するかどうかを感じてください。

 それからまた、元の言葉やフレーズ、あるいは、シンボルを思い出して、あなたが感じることに注意を向けてください。新たな自分の気持ちを表現し、そして、じっくりとその気持ちと共にそのままいてください。

 この実習が終了した後において、あなたは自分のプロセスにおいて起こったことを表現したく思うかも知れません。例えば、傾聴することのできる他の人と自分のプロセスを分かち合いたいと思うかも知れませんし、それとも、自分のプロセスを書くことや芸術作品、あるいは、行動などを通して表わしたく思うかも知れません。これは実習において受けた新しい重要なことを統合するためにしばしば役立ちます。

 ここにおける多くの考えは「Integrating Spirituality in Counseling: A Manual for Using the Experiencing Focusing Method」という本(エルフィー・ヒンターコプフ著、アメリカ・カウンセリング・協会によって1998年に出版された[日本では「いのちとこころのカウンセリングー体験的フォーカシング法」<金剛出版>])に基づきます。その本はこのウエブ・サイトにおける[フォーカシング インスティチュート ブックストアー]から手に入ります。

翻訳 大田民雄